あまがさきアート・ストロール 特別インタビュー その2

阪神尼崎駅から線路沿いに西に進むと、見えてくる大きな朱色の鳥居。海外で生活したからこそ見えてきた「日本のよさ」や「尼崎のよさ」があったという宮司の太田垣さんに、今回のあまがさきアート・ストロールへの思いを伺いました。

「外国人やアーティストの目線で尼崎に新しい風を」
尼崎えびす神社:太田垣宮司

ー太田垣さんは海外の方に日本の文化を伝えられていますが、昔から日本の文化に興味があったのでしょうか。

実を言うと、もともと神社を継ぐ気すらなかったんですよ。笑

小さいときに洋物の文化が入ってきて、なんと美しい、洗練された文化なんだと感激しました。
外国のチェーン店が尼崎にもどんどん入ってきて!アイスなんかもそれまでバニラしかなかったものが、何十種類も売っているアイス屋さんが中央商店街にできたんです。衝撃でした。「洋風のものは新しい!日本の文化は古い!」と思いこんでいましたね。

「神社という『狭いダサい世界』から、海外の『美しい洗練された世界』に抜け出したい!」という一心で、一生懸命英語や海外の文化を勉強して、航空会社に6年勤めました。

境内には招福開運の動物様たちがいっぱい!探してみてくださいね。

ー強い憧れから出た海外から、なぜ日本に戻ってきたのでしょうか。

勤めていたのは香港を拠点とする航空会社だったんですが、海外で過ごしたからこそ、日本の良さが見えてきたんです。

お食事だったり、おもてなしだったり、それぞれに深い意味があって、日本の文化の繊細さも改めて感じました。海外のよさも知る自分だからこそ、日本のよさと海外のよさを融合して何かできないのかなと思い始めたんです。

ーそんなご経験から始められたのが、巫女体験だったのですね。

コロナの前までは、留学生や海外からの観光客に向けて、巫女体験を開催していました。

女の装束衣装に身を包み、気を引きしめて巫女のお仕事を体験します。それぞれの動作に、どういう精神や歴史背景があるのかを説明しながら体験してもらうのですが、不思議なことに、国が違っても根本の精神は通じるところもあったり、同じことでも日本とは違った風に捉えられていたり、「自分の国ではこういった考えでこういう風にするんです。」と教えられることもあります。

ー巫女体験に来られる方は、尼崎の印象についてどう語られていますか?

皆さん特に商店街が気に入られますね。

巫女体験に来られる方は、大阪や京都などのよく知られた観光地には行き尽くしている方も多いのですが、そういう方々から見ると、尼崎の生活に根付いた商店街を歩くと、日本の(というより尼崎の、かもしれませんが。笑)人々の生活が垣間見れて、面白く見えるそうなんです。あとは、お洋服が衝撃的に安かった!とか、面白い食べ物が売られていてびっくりした!とか。そういった感想もよく聞きますね。外国の方の感想から、尼崎の良さを再認識することも多いです。

ただ、尼崎の方って、外国の方に喋りかけるのに緊張してしまうみたいなんです。あんなにいつも喋くりまわっているのに、外国の方を目の前にすると、なぜかちょっとびびってしまいます。尼崎にたくさんの方が来ることで、尼崎の方には新しい一歩を踏み出して欲しいな、 と思っています。

商店街にて。自分の国では見たことのない食べ物に興味津々!!

そういった意味では、今回「アーティスト」という、ある種、尼崎の外からの視線を通して尼崎を見つめ直すことも、外国の方が尼崎の新たな側面を見つけてくれることに近いのかもしれませんね。最後にあまがさきアート・ストロールにどんなことを期待するか、教えてください。

このイベントが会話のきっかけになったらいいなと思っています。

ここ最近、親しい人とでさえも喋りにくくなってしまいましたよね。人と話すという当たり前のことが、実は当たり前ではなかったということに気づいた2年間だったと思います。

尼崎の方同士がご近所で「こんなイベントやっているんやで。一緒に観にいこう!」と話すきっかけでもいいし、尼崎の周辺に住まれている方が「この間尼崎に行ってみて、なかなか面白いまちやったで」とお友達に伝えるでもいい。

最高にコミュニケーション能力に長けているこの尼崎という地で開催されるアートイベントだからこそ、尼崎でのまちでの会話や思い出が、明るい兆しのきっかけになればいいなと思いますし、尼崎にとっても新しい風になればいいなと思っています。

ちょうど3月が見ごろのミモザ。春はもうすぐ!
「尼のえべっさん」といえば、朱色の大鳥居。厳島神社の大鳥居よりも40センチほど高いとか。

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