城下町ブログ

第5回 お嬢様

前回、ご紹介した「幻の野球場(ジョー)」だった中央公園の噴水の脇を抜けて、まっすぐ北に進むこと2分。今回、ご紹介するのは「喫茶灘」。ドアを押すと、店奥のカウンターから「いらっしゃいませ~」と麗しい声と笑顔で出迎えてくれるのは、店主の片山佐登美さん。ランチ時には、近隣のオフィスで働く常連のサラリーマンで賑わう。

すごいのは、ここは23歳の若かりしお嬢(ジョー)様だった片山さんが開業し、来年には創業50年を迎える老舗喫茶だということだ。片山さんは、生まれも育ちも阪神尼崎駅前という生粋の尼っ子。短大卒業後、「雇われて働くより、自分で何かしようと思って」と、実家を改装し喫茶店を開くことを決心。会社経営をしていた父親も娘の選択に、「ええんちゃうか」と後押しし、父親名義で銀行から借り入れをして応援してくれたそう。「でもね、そのお金も結構すぐに返せたの」と涼やかにおっしゃる。
当時、お店の界隈には大手銀行や保険会社、証券会社の支店が多く軒を連ね、当時は尼のウォール街さながらだったらしい(「尼のウォール街」なんて大仰に言うのは、当編集部くらい?!)。そんな界隈にあり金融マンのランチ処として重宝されたそう。「仕出し弁当100食くらいも受けたり、スタッフも5人雇って、本当に忙しかったわ」と振り返る。「そうは言っても長くやってるから、いい時ばっかりではなかったけれど」というが、50年も続いているからあっぱれだ。

 

<「この子はホント二人分働くから」と全幅の信頼を寄せる娘さん(左)とともに>

そんな母の姿を見て育った二人のお嬢(ジョー)様も、自然にお店を手伝い始め、今は母娘で店に立つ。

さて最後に、老舗喫茶灘のこだわりを三つばかり紹介しよう。

<サイフォンコーヒーを淹れる片山さん>

一つ目は、もちろんコーヒー。開店当初からサイフォン式で淹れるブレンドコーヒーは飲み口の軽さが自慢。サイフォンが並ぶ様も絵になる風景だ。

 

 

<日替わり定食750円は、ごはんとお味噌汁、メイン料理に小鉢料理が3品も付くバランスメニュー>

二つ目は、30年ほど前から始めたという日替わり定食。メインの魚は魚屋、肉は肉屋と仕入れからこだわる。塩サバ定食だった取材日。常連客からの男性が「今日は魚なんや~。骨抜いてくれた?」となんて甘えをも許してくれる懐の深さも目撃。常連が通いたくなる理由が分かった気がした。

 

 

そして、三つ目は、店内にあちこちに飾られた豪華な花。花好きな片山さんが、毎週初めに店内のあちこちに生ける花々から立ち込める良い香りと華やぎも一緒に味わえる。

 

今回は、尼崎城下に尼のお嬢(ジョー)様が花咲かせた喫茶店のお話でした。さて、次はどんな「ジョー」をご紹介できるか・・・。

喫茶灘 昭和南通3-10 TEL:06-6413-9258
【営業時間】月~金:7:00~18:00/土:7:00~12:00 日休み