城下町ブログ

第10回 上々


<「尼いもごはんの素」の調理例>

尼崎の伝統野菜「尼いも」をご存じだろうか。かつて尼崎の特産品だったサツマイモだ。江戸時代から尼崎の臨海部の新田地帯で栽培がはじまり、最盛期には年間3,000トンを収穫したといわれるが、台風による高潮の影響で生産者が減少し、1950年ごろ姿を消した。

復活のきっかけは、尼崎公害患者・家族の会が発行したイラストマップ「尼崎南部再生プラン」だった。「尼いもがあった頃の尼崎には、公害がなく澄んだ青空が広がっていた」と、かつてのまちへの郷愁と香り高い風味を懐かしむ声を受けて調査に着手し、2003年に試験栽培を経て復活した。

尼いもを使った商品開発も進む。焼酎「尼の雫」や佃煮「尼いものつるの炊いたん」は、すべて生産者と市民ボランティア、企業が連携して商品化したまちのみやげである。畑の減少や苗の生産に限度があるため年間の生産量は2トンに満たないが、少ない材料を加工して少しでも多くの人の手に広める努力が続けられている。


<茎を佃煮にした「尼いものつるの炊いたん」とギフトセット「尼いもづくし」>

そして2019年の秋に、新たな商品が生まれた。その名も「尼いもごはんの素」。尼いもの水煮と茎の佃煮を具材に、かつおと昆布の合わせだしで炊き上げる。尼崎商工会議所が事務局を務める伝統野菜活用協議会が商品企画を、1889年創業の佃煮製造の老舗である小倉屋居内が製造を担った。社長の居内隆志さんは素材へのこだわりから、毎年北海道まで昆布の収穫を手伝いに行くという。

商品開発の契機は、2016年にさかのぼる。尼崎市制100周年の記念給食として、尼崎市産の材料を使った献立に尼いもごはんが抜擢されたのだ。小学校での試食に招かれた尼崎商工会議所の藤畑憲正さんは、「子どもたちが毎日でも食べたいと顔をほころばせていたのが忘れられず、次は食卓に届けようと企画がスタートした」と話す。

<尼崎市市制100周年記念給食を紹介するチラシ>

毎年11月に橘公園で開かれる農業祭で試作品を販売するとともに、子育て世代とシニア世代を対象に試食会を開き意見を聞いた。子育て世代は食材への関心が高く、天然だしの使用を評価。シニア世代は米の炊き具合(水加減)や具材のいもの固さに意見が集中した。


<尼いもごはんの素のパッケージ(左)と中身(右)。いもの水煮、茎の佃煮、だしが入っている>

商品のパッケージでは、素材の尼いもと、だしの原料である昆布とかつお、そして新名所の尼崎城を木版画で表現した。実店舗としてはあまがさき観光案内所、通信販売を尼崎商工会議所ホームページで受け付けているほか、尼崎市のふるさと納税の返礼品にも登録。売れゆきは上々(ジョー)だという。ぜひ売り切れる前に味わっていただきたい。

■参考
尼崎商工会議所の紹介ページ
https://www.amacci.or.jp/topics/amarice/

尼いもごはんの素セット(尼崎市のふるさと納税紹介ページ)
https://www.furusato-tax.jp/product/detail/28202/4777932