多様な個性がそれぞれ尊重され、人々が等身大で暮らす街・尼崎。その魅力をより多くの人に知ってもらおうと、毎年秋に六甲山で開催されている「六甲ミーツ・アート芸術散歩」のコンセプトを基に、尼崎の街の至る所に展示された現代アート作品を自由に「ストロール(散歩)」しながら鑑賞できる展覧会を開催。駆け足でまわると1日で、歴史博物館や尼信会館の企画展や特別展も合わせてじっくり鑑賞するなら2日間で楽しめる内容となっている。ぜひ、商店街で尼崎名物を買い食いしながら、春めく尼崎と現代アートのコラボレーションを満喫しに出かけてみよう。その他大覚寺や貴布禰神社、尼崎えびす神社で購入できる特別御朱印、フリーマーケットや大道芸、ストリートライブなどの関連イベントもありアート鑑賞以外の楽しみも盛りだくさんだ。注目の作品を一部ご紹介。
多様な個性がそれぞれ尊重され、人々が等身大で暮らす街・尼崎。その魅力をより多くの人に知ってもらおうと、毎年秋に六甲山で開催されている「六甲ミーツ・アート芸術散歩」のコンセプトを基に、尼崎の街の至る所に展示された現代アート作品を自由に「ストロール(散歩)」しながら鑑賞できる展覧会を開催。駆け足でまわると1日で、歴史博物館や尼信会館の企画展や特別展も合わせてじっくり鑑賞するなら2日間で楽しめる内容となっている。ぜひ、商店街で尼崎名物を買い食いしながら、春めく尼崎と現代アートのコラボレーションを満喫しに出かけてみよう。その他大覚寺や貴布禰神社、尼崎えびす神社で購入できる特別御朱印、フリーマーケットや大道芸、ストリートライブなどの関連イベントもありアート鑑賞以外の楽しみも盛りだくさんだ。注目の作品を一部ご紹介。
あまがさき観光案内所
佐川好弘 「カウチポテト君(愛と平和)」
中央公園
松本かなこ 「Resilience」
作品画像準備中
尼崎城
釜本幸治 「浮標-淡い寄る辺-」
-尼崎城の濠に浮かぶ、不安定の象徴「ブイ」-
浮標とは海に浮かぶ標識(ブイ)のこと。私たち人間も同じ場所、時間に留まることを許されない、人生という大海原に漂う不安定なブイのようなものかもしれない。そんな頼りなげに揺らいでいる1人の人間も、誰かにとっては道標のような大切な存在かもしれないと作品は語りかけている。尼崎城の美しい石垣を活かすため、近しい色合いの真鍮で制作されている。作品に西日が当たり水面が静かに揺れる、風のない晴れた日が最も美しく見える。
池原悠太 「melt」
-動物、自然、人工物が混在するカオスな世界観-
平面で描かれた作品を再構成し、映像化することで作品に新たな視点を生み出している。廃墟に代表されるような暗い近未来「ディストピア」と動物や自然が織りなす明るい理想郷「ユートピア」の混在、それは我々が暮らす今の地球であり、その曖昧さ、複雑さを絵画という手法で見事に表現している。さまざまなモチーフが何度もループするので、見ているうちに新たな気づきが生まれてくる。
しみずきみこ 「ひとりオリンピック」
-写真の中でなら叶う、夢のオリンピック出場-
尼崎城の1階、2階に展示されている「ひとりオリンピック」は日本広告写真協会「APA AWARD 2020」写真作品部門の奨励賞を受賞した作品。シンクロナイズドスイミングはラップを頭に巻いて鼻は洗濯ばさみでつまむ、重量挙げのダンベルは手作りするなど身近にあるものを駆使して独自でオリンピック種目を表現し、セルフスイッチで撮影したポートレイト写真。一見ふざけているようだが、実は大まじめにリアルを突き詰めて創作された、非常に臨場感のある作品だ。
中央図書館
横山裕一 「単行本『燃える音』より『出現』」
-図書館の擁壁に漫画の一部が出現-
2020年制作2021年刊行の新刊「燃える音」をアート的に見て効果的な部分を複写、拡大、出力し、切り貼りされたコラージュ漫画。コンピューターグラフィックスと勘違いするかもしれないが、近づくと消し忘れた下書きの跡や、はみ出した線などがはっきりと見て取れる。拡大することによってその部分が顕在化するのもこの展示ならではといえる。
伊吹拓 「– 遠赤 –」
-駐輪場の屋根に並べられた、巨大な「1つ」の絵-
縦1.8m、横3mのキャンパスに描かれた24枚の抽象画で1つの作品を構成。尼崎城の5階、図書館の3階から鑑賞できる設定だが、これくらいの高さでないと作品全体が把握できない。最近はドローンで撮影された映像を見る機会が多くなってきているが、これだけ大きな作品を肉眼で上から見下ろすという鑑賞方法は珍しく、貴重な時間を体験できる。晴れた日、雨の日と違う色合いになり、環境によって作品の表情が変わるのも魅力。
旧尼崎警察署
佐藤圭一 「おねすと」
-笑ったり、喜んだり、怒ったり…。人間のストレートな感情を表現-
一昨年、岡本太郎現代芸術賞展の入選作品。昨今、コロナ禍でマスクをしているため相手の表情が分かりにくいことを実感する機会が多いが、以前から人は社会生活を営むにあたり、感情を抑えることが非常に多く、もっとストレートに自分の気持ちを表現したいという作者の想いから生まれた彫刻作品。出会った瞬間は作品の大きさや色合いから受ける強いインパクトに驚くが、その飾らない表情に対して憧れに近い感情を抱く人も多いだろう。
二の丸公園
史枝 「きっかけの木」
-尼崎の人たちの濃く、温かいキャラクターからインスパイア-
尼崎に1か月間滞在し制作した100%「made in Amagasaki」な作品。古道具屋、たこ焼き屋、旅館の女将、パッチワーク講師という尼崎にゆかりのある4人を取材し、その時に浮かんだ図柄をパッチワークに起こしている。お世話になった方々との出会いという「きっかけ」を木に「ひっかけ」、展示するというダジャレも盛り込まれている。アート・ストロールの会場としては1番東の位置にあり、ベンチもある静かな環境なのでゆっくり鑑賞するのがおすすめ。
尼崎市立歴史博物館
奥中章人 「INTER-WORLD/SPHERE」
-人間の関係性を虹色の球体で表現-
歴史博物館の中庭に鎮座する、偏光フィルムで制作された巨大な球体。晴れた日はビビットカラー、曇った日や雨の日はパステルカラーと天気によって色が変化。また、見る人の角度によっても全く違う色に見える。人と接するとき、自分自身のコンディションはもちろん、相手のコンディションやまわりの環境、相手の印象が変わることを表現している。会期中に開花が期待される桜とのコラボレーションを考え、青空のシアンから桜のマゼンダの領域で色が変わるように計算されているのも見どころ。
中尾純 「女王戦」
-見る側の想像力を掻き立てる作品-
学校の教室の趣が残る空間には、クリアフォルダーで制作された大きな2人の女王が展示されている。女王たち当人はゲームに熱心な様子だが、見ているものにはどのようなルールで行われているのか想像がつかない。教室という人間関係渦巻く空間も手伝って、相互理解のコミュニケーションの難しさを伝えている。
開明庁舎
藤田淑子 「Ms.Curtain の心象」
-表情の分からない顔×現代短歌が空間を埋め尽くす-
顔面にカーテンのかかった表情の分からない、主に女性をモチーフとした赤い世界、青い世界、さらに赤と青が混在した世界が壁面いっぱいに広がっている。合わせて作者が現代短歌の歌人でもあることから、2020年から書き溜めた短歌の中から400種を厳選し、天井からモビールで展示。偶然目の前に現れた言葉と対峙するのも興味深い。
穂波梅太郎 「僕の話」
-ゆっくり大切な人と話をしたくなる空間-
絵画、立体物の2作品を出展。絵画は不気味さがありながらも人を惹きつけてやまないシュールレアリズムの要素がある作品。立体物は昨年「六甲ミーツ・アート」に出展したものをリメイク。立てて置かれた巨大な本を開くと、コミュニケーションをコンセプトとした言葉と挿絵のような造形が現れる。手前に積み上げられた本にはベンチとして自由に座ることができ、この機会に相手と向き合ってじっくりお話をしませんかというメッセージが込められている。
STUDIOHAIDEBAN廣田郁也 「ノーザンライツ」
-空間全体を作品として体験できる、インスタレーションともいえる作品-
開明庁舎の1室にカーテンのように吊るされた1枚の布。絞り染めのような抽象的なパターンは、花や山など具象的なモチーフより、観る人の想像力を掻き立てる。日常生活では出会うことのない大きさ、長さの布、そしてそれを展示した空間全体を作品として楽しめる。窓を開けて展示することで風に揺れ、また西日が当たると美しく発色する姿も見ごたえがある。
三松拓真 「ハウス!!」 「Inhabitant(新作)」
-動物でもあり、車やバイクでもあるコミカルな作品-
「六甲ミーツ・アート」に出展した作品に新作を加え、新しい構成で展示。新作は開明庁舎の駐輪場にあたかも乗り物かのように展示されている。作品は全て彫目がリアルに感じられる木製彫刻。手を触れてOKなので、コンクリートやプラスチックでは感じられない木ならではのテクスチャーを体感できる。
尼信会館
イムラアヤコ 「煌めくモノ」
-閑静な庭とキラキラオブジェのギャップに萌え-
「六甲ミーツ・アート」に出展した作品を約1ヶ月かけてリメイク。尼崎城の外壁をイメージした白壁が美しい尼信会館の庭に表面にミラーを埋め込み、光が当たると立体の一部が透けるような錯覚を覚えるド派手なオブジェを設置することで、あえて違和感を演出。庭との対比を含め、強烈に印象に残ること間違いなしの作品だ。
大覚寺
楢木野淑子 「帷」
-仏像、寺院などを飾る瓔珞がモチーフー
焼きものならではの質感が魅力的な陶板で制作された円盤には無限に広がる万華鏡、華やかさ豊かさを持つ植物、生命力にあふれる動物、転変に輝く星など、様々な世界が表現されている。光の当たり具合に大きく影響を受けるため朝の光に当たると見ごたえあり。午前中の訪問がおすすすめ。
楢木野淑子 「汀」
-汀の上に佇む舞台までもが作品の一部に-
焼きものならではの質感が魅力的な陶板で制作された円盤には無限に広がる万華鏡、華やかさ豊かさを持つ植物、生命力にあふれる動物、転変に輝く星など、様々な世界が表現されている。光の当たり具合に大きく影響を受けるため朝の光に当たると見ごたえあり。午前中の訪問がおすすすめ。
貴布禰神社
鐵羅佑 「かすむ」
-小指ほどの絶滅危惧類を9m以上の大作で表現-
鳥居が鉄製であること、かつて尼崎が阪神工業地帯の中核的存在であったという繋がりから貴布禰神社内に鉄製の作品を展示。六甲山に生息する「カスミサンショウウオ」がモチーフ。普段認識しづらい命を再認識して欲しい、さらに生物から1番遠いイメージの「鉄」で表現することで鉄をもっと身近に感じて欲しいという作者の願いが込められている。溶接痕をあえて隠さず残し、それに触れることでまるでサンショウウオの皮膚のような感覚が楽しめる。
君平 「ヒゴタイ」
三和市場
German Suplex Airlines 前田真治 「もやしの草原」
―すたれ気味の空間に対する新しいにぎわいの方法論―
人間が寄り付かなくなった三和市場の新たな移住者としてこの暗さ、この風通しの良さを利用したもやしをセレクト。種から育成し、会期中にどれだけ育つかがこの作品のテーマ。もやしは漢字で「萌やし」と書くことからすたれて暗くなった空間をもやしで「萌えさす」という意味も込められている。会期後は仲間のアーティスト達と食べる予定とのこと。
German Suplex Airlines 前田真治 「経年ディスコ」
-「切れかけ」を盛大に経験できる場を提供-
蛍光灯の主流がLEDになり、電球が「切れかけ」ることが日常の風景からなくなりつつあることから、TikTokerやYouTuberなどが自由に動画を撮影できるよう、閉店した和菓子屋の全ての蛍光灯を切れかけの状態にし、コントロール不能なストロボ空間を作り出した。「切れかけ」というすたれ始めた現象を最新のデジタルで残すという、ここでしか出来ないシュールな参加型アートとなっている。
German Suplex Airlines 風間天心 「Chink Chink Train」
―ありがたい気持ちになる厳かな空間―
僧侶としても活動する作者ならではのノスタルジーを感じさせる作品。「Chick」とは隙間を意味する。光源を動かすことによって隙間から光が漏れる「モアレ現象」が起き、今は締まっているシャッターの奥から、かつて賑わっていた三和市場の記憶が「漏れる」ことに繋がっていく。鑑賞者自身が紐を引いて光源を動かすことが出来るという、体験の要素も組み込まれた作品である。
German Suplex Airlines 風間天心 「Opposite Site」
―中古の提灯をリメイクした異次元なクラブハウス―
作者がお盆のお参りの際、各家庭にある提灯からインスピレーションを感じて生まれた作品。提灯の上物をはがし、光量をかなり強くすることで妖艶な光を放ち、不思議な世界へと誘ってくれる。投影する絵柄は花、果物などを用い、かつての市場のにぎわいを再現。サイケな雰囲気ではあるが、提灯の回転がテクノロジーではなく上昇気流により生み出されることが人の感覚に合うのか、不思議と落ち着く空間となっている。
German Suplex Airlines太陽雅晴 「明るい未来の部屋」
「Bright Future on Wall」 「三和の明るい未来」
German Suplex Airlines太陽雅晴
「明るい未来の部屋」
「Bright Future on Wall」
「三和の明るい未来」
-本当の「明るい未来」とは何なのか、問いかけられる部屋-
「明るい未来」とは福島県双葉町に約30年前に掲げられた標語看板「原子力 明るい未来の エネルギー」から本歌取りしたもの。展示場に入ると写真映えする緑色の「明るい未来のエネルギー」のネオン管が輝き、「明るい未来」の語が入った持ち帰り可のポスターも用意されている。普段は休憩所として使われている展示場で、休憩がてら自分の「明るい未来」について少し考えてみてはどうだろう。三和市場の入り口には、夜は美しく輝く「明るい未来」の文字が掲げられている。
尼崎えびす神社
葭村太一 「34°43′10″N135°24′47″E」
庄下川公園
史枝 「カラスの巣」
A-Lab
A-Labの特別展示では、10組のアーティストが作品を展示しています。
このほか、Studio Spass、久保木要の作品も展示。
このほか、Studio Spass、久保木要の作品も展示。
編集協力・写真提供:ぴあ株式会社
編集協力・写真提供:ぴあ株式会社