変わらぬ味を作るために変わり続ける
大貫本店には絶対に変えないものがあります。
それは、麺も含めてすべて手作りで、手間暇を惜しまないこと。
そこだけは絶対に変えず頑張り続けているそうです。
「お湯を注いで簡単にできる中華そばも便利で必要なものだと思いますが、昔ながらの方法で手作りする人がいなくなると、文化や歴史がなくなってしまう。だから勝手に使命感を持って手作りを続けてる。」と店主の千坂さんは言います。
お店の名前「大貫」というのも、いつでも初心を「大」きく「貫」くという思いから名づけられたそう。
大貫の中華そばには、すべて手作りならではの人の温かさがつまっているのです。
店内のポスターには、「変わらぬ味を守るために、私たちは変わり続けています。」と書いてあります。
千坂さん:
「4代、5代目のお客さんから『変わらない味だね』と言ってもらいますが、実はすごい変わっている部分があるんです。でもそれは変わらない味を守るために変えていることであって、人には見せないんですよ。全てのことに頑固にこだわり続けていたら、続くものも続かないという考えを持って仕事をしています。」
どの部分を変えれば、効率が良くなるのか、より美味しくなるのか、よりリーズナブルにすることができるのか。千坂さんは常にお客さんの目線に立ち、考え続けることで昔から変わらぬ味を守り続けていました。
千坂さん:
「先代たちが間違わず、選択と挑戦をしてきてくれて、今があるので、同じ思いを込めて中華そば、焼き飯を作っています。創業当初は便利な時代ではなく、手作りで作るしかありませんでしたが、それが今となっては大貫本店の伝統であり、やりがいです。」
現在は人がやっていた作業を機械が行うようになる時代です。そんな時代だからこそ、人の温もりを感じることのできるこの中華そばが、人の心を掴んで離さないのだと思いました。
100年間変わらぬ味を堪能しました!
私たちがこの取材のために入店したのは15時を過ぎていました。
この時間なら客足もひと段落しているかなと思いましたが、店内はお客さんでいっぱい。
「いらっしゃいませ」と優しい声が聞こえ、初めて来た私たちもなんだか懐かしい気持ちになりました。
中華そばとチャーハン1つを注文。
中華そばを食べたのは初めてでしたが、「食べやすい!優しい!懐かしい!あったかーい!」という小学生のような感想を口にしてしまいました。
チャーハンも2人で一つ頼みましたが、割と量が多くあったのにもかかわらずペロリと食べきってしまいました。
アットホームなお店で味わえる美味しく優しい一皿です。
店主もお客さんも4代目
千坂さんは19歳から家業を継いでらっしゃいます。その中で、お客さんとともに成長していることを実感できる時が凄く嬉しい瞬間だそうです。
千坂さん:
「うちの父もおじいさんもひいおじいさんもずっと続けてきたんやなあと思うと、有難く思いますし、やりがいも感じます。お客さんも私も4代目なんです。」
お客さんが大貫本店に通いつづける理由の1つは、千坂さんという人の魅力でもあると感じました。
店主の語る、守り続けてきたタレ
千坂さん:
「うちには100年間継ぎ足してきている熟成醤油ダレがあってね、中華そば、焼き飯すべての料理にその元ダレがベースになっているんです。
100キロの僕が入れそうなおっきなステンレスの寸胴に毎日、使っては継ぎ足して使っては継ぎ足して、108年間継ぎ足してきた醤油ダレがあるんです。
それはうちの家宝で、復元したり、マネしたりということはできません。
神戸・淡路大震災のときに失っていたらと考えると⋯。
奇跡的に当店のタレは大丈夫でした⋯。揺れがあった後、すぐに走って見に来てみたら、私の父も走って見に来ていたんです。
ふつう息子の僕の安否を確認すると思うんですけど、まず「タレ大丈夫か!?」でした(笑)」
伝統あるお店ならではのお話が聞けて私たちも興味津々でした。
最後に
大貫本店には、知らない人と相席になって、あーだこーだと話しながら仲良くなり、ついには注文した唐揚げや焼き飯をシェアしつつ食べているというような方がたくさんいるそうです。
大貫本店というお店は、店主の千坂さんをはじめとした温かい尼崎の方々の魅力が詰まった、温かいお店です。
これをお読みの皆さまも、大貫本店で最高の一杯を尼崎の方と共に味わいませんか?
Information
大貫本店
住所 :尼崎市神田中通3-29
営業時間:11:30~20:00までにご来店ください(LO20:30)21:00閉店
現在時短営業中:11:30~19:00(LO)19:30閉店
定休日:水(祝の場合は営業)
TEL:06-6411-9583
アクセス:阪神各線尼崎駅より徒歩約4分
文・撮影:関西学院大学経済学部栗田研究室
(掲載情報は2022年6月時点のものです)
私たち関西学院大学経済学部栗田研究室は「これまで尼崎を支えてきた地元のお店や人々の魅力を伝えるとともに、未だ『苦い』印象をもたれることのある尼崎のイメージを今まで以上に親しみやすく、『甘い』ものへと変えていく」という想いでこの「甘尼」の活動を行っています。
詳しい活動紹介はホームページから→https://kurikuriresearch.wixsite.com/website