実在した尼崎城主の小説『殿ブラ』!作者・谷口雅美さんインタビュー

今回は、実在した尼崎城城主青山幸利が登場する時代劇小説『殿、恐れながらブラックでござる』(通称『殿ブラ』!)の作者である、尼崎在住・谷口雅美さんにインタビューさせていただきました。この小説を書くことになったきっかけや、谷口さんのおすすめの尼崎のスポットなども、気さくに話してくださいました!

——『殿ブラ』を書くきっかけは何だったのでしょうか?「南部再生(※)」でもともと『青大録』の現代語訳を書かれていたようですが……。

 てらまちプロジェクト(※1)に参加した際、尼崎市立歴史博物館のアーキビスト(※2)の方が『青大録』をよく話題に出されており、幸利公のことを知ってはいました。同じころ、『青大録』を超現代語訳してみないかと「南部再生(※3)」の方からお声がけいただいたことがきっかけで、「南部再生」に『青大録』の現代語訳を寄稿したんです。

 この経験がすごく楽しくて。書くことそのものよりも、歴史博物館のアーキビストの方と、昔の大名も今のサラリーマンとあまり変わらないねなんて話しながら、当時のことを聞くのがすごく楽しかったんです。それで講談社に本にしたいと話を持ち掛けたのですが、江戸時代の譜代大名である青山家は、どうしても同じ時代の外様大名に比べると地味でマイナーだということで、担当さんの最初の反応は微妙でした(笑)
 ただその後、タイミングよく企画が通って小説として書き始めることになりました。

※1てらまちプロジェクトとは……尼崎を「住み続けたくなる、訪れたくなる、移り住みたくなる、働きたくなる」まちにするためのプロジェクトとして、阪神尼崎駅南側の寺町・開明町を拠点とし2017年からスタートしました。
※2アーキビストとは……尼崎市立歴史博物館には、公文書館機能を担う地域研究史料室(あまがさきアーカイブズ)に古文書・歴史的公文書等を取り扱う専門スタッフ(アーキビスト)がいます。
※3南部再生とは……尼崎南部地域活性化のための情報誌。
南部再生に寄稿された超現代語訳『青大録』はここから読めます。
http://www.amaken.jp/59/5917/ 

——その時から今の『殿、恐れながらブラックでござる』という題名だったのですか?

 最初から題名はこれでした。時代劇小説に「ブラック」なんて、どこかでストップがかかるだろうと思っていたのですが、そのまま現在にいたります。(笑)

——『殿ブラ』を書く際に参考にされた資料などありますか?

 実は一番役に立ったのは、尼崎市の教育委員会から出されている『尼崎城研究資料集成』(https://www.city.amagasaki.hyogo.jp/manabu/bunkazai_0/1019752.html )なんです。城の内部構造などを理解するために使っていました。

——小説を書く際はやはり建物の構造なども頭に入れた上で書かれているんですね!

 普段はあまり考えないのですが……(笑)城下のどこに、どういう序列で武士の住まいがあてがわれていたのかなど、全く知らない時代のことを資料を基に少しでも当時の様子に近づけるという意味で役立ちましたね。
 また、『青大録』については、歴史博物館のアーキビストの方がすでに何がどこに記載されているのかをまとめた資料があったので、それを基にし、今回の小説の舞台の年代から外れているエピソードは使わないようにしました。

——谷口さんの『殿ブラ』のお気に入りの登場人物や、見どころはどういう箇所ですか?

 見どころは、幸利の人間臭いところですね。小説内でも側室がいない設定ですが、実際の家系図でも、側室が本当にいない珍しい殿様なんです。ただ、お気に入りの人物ってなると難しいですね(笑)幸利と兵庫、家老の仁右衛門と兵庫というような、キャラクター同士の絡みが書いててすごく楽しかったですね。キャラが勝手に動いてくれる感じ。

——エフエム尼崎のラジオの番組でアシスタントをされてた時期もあったそうですが、きっかけは何だったんですか?

 尼崎でこんなラジオ番組が始まりますよというのを某ネットニュースで見て、実際に番組を聞いてみると、面白くてファンになりました。

プレゼントの応募をしたり、質問や感想をメールで送ったりし続けていたら、覚えめでたくアシスタントをすることになったんです。
 番組が一回休止するときの打ち上げに呼んでもらえて、その時に、「次再開したらアシスタントお願いね」と言われまして。酔った冗談かと思いきや、再開の時に本当にメールが来て、アシスタントをすることになりました。

 私としても、いろんなネタ探しや取材になるかなと……。
 『青大録』を超現代語訳するよう勧めてくれた「南部再生」の方が、当時はそのラジオ番組の構成を担当していて、そこで知り合えたんです。なので、あの番組がなければ殿ブラはできていなかったんですよ。

——小説は社会人になってから書き始めたのですか?

 高校生の頃から書いていました。その頃から、「自分は小説家になるんだろうな」と思っていましたね。今から思うと若気の至りだなと思うのですが……(笑)
 ただ、今こうやって小説を書いているのは、「運と縁とタイミング」です。『殿ブラ』についても、エフエム尼崎のアシスタントをしていなければこの小説はできていないですし、最初は企画が通らなかったのに急に「やっぱりヨロシク!」という流れに変わったのも、本当に運と縁とタイミングが良かったからだと思っています。

——尼崎でお住いの谷口さんから見て、市外の人に尼崎のことを何かおすすめするとしたら?

 たくさんありますよ!個人的には、近松門左衛門の資料館がすごく楽しかったですね。
 あとは商店街です。三和商店街も杭瀬商店街も立花商店街も、すごく活気があるので好きです。気軽に声をかけることができたり、逆に声をかけられたりするのはすごくいいですよね。
 おすすめのグルメは、定番ですが日新天ぷらさん(兵庫県尼崎市建家町83 )が一押しですね。あと、立花にあるたこ焼き屋のさがらさん(兵庫県尼崎市七松町1-8-18 )です。今日も行ったら、焼き上がりまで時間がかかるって言われてしまって、「また今度」ってなりました(笑)結構人気のお店なんですよ。

——次回作については…?

 次回作は、大阪が舞台の児童書の予定です。最終の段階になるまではまだ分からないですが……。

——次回作楽しみにしています!では最後に、尼崎への思いをお願いします!

 尼崎は、住みやすいし、東西南北それぞれ個性があって、面白い街です。いろいろ見どころがあるのにあまり知られていないのがもったいないなという思いがありますが、本当は観光で来るもよし、住むもよし。それが尼崎だと思っています!!

谷口 雅美(たにぐち まさみ)
神戸女学院大学卒業。「99のなみだ」「最後の一日」「99のありがとう」などの短編小説集に参加。2016年、第44回創作ラジオドラマ大賞に佳作入選。2017年『大坂オナラ草子』で第58回講談社児童文学新人賞佳作入選。著書に『教えて、釈先生!子どものための仏教入門』(釈徹宗氏と共著)『泣き虫マジシャンの夢をかなえる11の物語』『私立五芒高校 恋する幽霊部員たち』など。2011年よりFM尼崎「8時だヨ!神さま仏さま」のアシスタントを務める。兵庫県尼崎市在住。

谷口さん、お話ありがとうございました!

『殿ブラ』こと、『殿、恐れながらブラックでござる』は、書店他、あまがさき観光案内所や尼崎城のショップでも販売中です!
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https://kansai-tourism-amagasaki.jp/news/5039/

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