尼崎の町工場の高度な技術から生まれるモノ by ゼロ精工株式会社

あまがさき観光案内所「尼崎のすご技術(わざ)」コーナーでは、ゼロ精工株式会社の高度な加工技術で作られた部品の展示やデライトラボの金属製ステーショナリーの販売を行っています。そこで、デライトラボで商品企画から販売まで担っている金指さんに、より詳しいゼロ精工株式会社のモノづくりや、金属製ステーショナリーが生まれたきっかけ、新商品開発についてのお話を伺いました。

——ゼロ精工株式会社やデライトラボができたきっかけを教えてください。

 

 ゼロ精工株式会社の前身企業である【カトギプレックス】は、半世紀以上続く油圧制御部品製造メーカーでしたが、バブル経済崩壊の煽りを受け、注文数が激減したことで旋盤加工機の稼働率が下がっていました。そんな中、自社企画商品の製造をするために、【メタルクラフト事業部】が創設されました。


 メタルクラフト事業は、贈答品需要の増加から販売数を伸ばし、事業が拡大していきましたが、そんな中、カトギプレックスが突然倒産してしまいました……。

 しかし、そこで誕生したのが【ゼロ精工株式会社】です。これは、カトギプレックスの技術がなくなるのは惜しいと思ってくださった協力企業の助けがあってこそでした。
 そして、メタルクラフト事業については、新たな会社【デライトラボ】として、ゼロ精工の高度な技術をゼロから商品にする企画力とデザイン力を武器に、商品販売を行っています。

——ゼロ精工株式会社が製造している製品は何ですか。

 主にフォークリフトなどの油圧制御部品の製造を行っていますが、「航空・宇宙・防衛品質マネジメントシステムJIS Q 9100」の認証を取得し、ボーイング社の航空機部品や私たちの安全を守る防衛関連部品の製造にも携わっています。
 ゼロ精工では、安定した生産体制のもと徹底した品質管理を行っており、国内外の取引先から信頼される品質の高い製品の製造が実現しています。

ゼロ精工株式会社の工場を見学させていただきました!

 ゼロ精工株式会社は元々小さな製品の加工を中心に行っていたそうですが、取引先のニーズに応えるため、現在では大型旋盤加工機による大型製品の加工も行っています。

 大型旋盤加工機では、加工する数値を入力し、材料をセットするだけで、無人でミクロン(1000分の1ミリ)単位の加工ができるそうです。

 さらに、ナノ(1,000分の1ミクロン)レベルの精度を出すには研磨工程が必要です。研磨をしっかりしないと取引先の寸法公差の要求に応えられず、製品が組み立てられないなどの問題に直結するんだとか。
 与えられた納期で注文数すべてをナノ単位で精度を出すには、大変な努力が必要で、その努力を怠らずに出来るところが、ゼロ精工株式会社の強みだそうです!

 CNC自動旋盤等では小ロットの製品を作ると、コストが合わない場合もあるため、発注数によっては、職人さんが手作業で製品加工をしています。このように、機械加工と職人加工の生産体制があるため、様々なオーダーに対応することができます。

 社名「ゼロ精工」の“ゼロ“は、納期遅れ”ゼロ“や、不良品”ゼロ“を目指す意味が込められていると、金指さんから教えていただきました。

——メタルクラフト事業について教えてください。

 メタルクラフト事業最初の商品は、一輪挿しでした。それをさらに進化させて、ペン立てにできないかと考えていた時に、本業の製品である油圧制御部品のシリンダーとシャフトの動きがヒントとなり、ボールペン「溜息3秒」が生まれました。
 こちらは商品の性能などが認められ、梅田 蔦屋書店や代官山 蔦屋書店などでも販売されています。

——新しい商品の開発は行っていますか?

 金管尺八 【心妙(しんみょう)】を製作中です。
 実はこちらは、ある男性からの「溜息3秒を作る技術で楽器を作れないか」との突然の電話がきっかけで作り始めたものなんです。普通なら「出来ません。」で電話を切るところなのですが……(笑)、ちょっと面白そうなのでデライトラボを窓口として話を聞いてみると、「金属製の“尺八”を作れないか」との話でした。


 初めは、金属の尺八を作る必要はあるのかと正直疑問に思いました。しかし、「竹の尺八は、1つとして同じものはなく、同じ音を出せるものが存在しないこと」また、「湿度にデリケートなため、割れることもしばしばあること」という課題を解決するために、「金属製の尺八が必要だ!」と説得されまして……。

 ゼロ精工株式会社の社長とも相談を重ね、ゼロ精工としても会社の可能性を広げる研究だと決断し、新しい商品づくりが始まりました。

 

——心妙は、どのように開発しているのですか?

 

 【心妙】の製作コンセプトは、本来の竹の尺八を金属に置き換えてもなお、古典的な鳴り方を目指すということです。試作とテスト演奏を繰り返しながら尺八を製作しており、「TEST ver4.00」すなわち4本目の試作となりました。

 初めて作った尺八の素材は、ジュラルミン(アルミ)で作成しましたが、素材の密度が高く、軽量化を進めても竹の尺八の約1.5倍の重量でした。

写真左はマグネシウム合金、写真右はジュラルミンで制作したもの。

 次に作った尺八の素材は、マグネシウム合金でした。

 マグネシウムの旋盤加工は発火の恐れがあり、加工の難易度は高いですがなんとか完成し、重量も竹の尺八と遜色ないものになりました。しかし、マグネシウムは腐食が進みやすいことから、息を吹き込むことで中の湿度が上がってしまう楽器の素材には不向きでした。

写真左が、ジュラルミン製。写真右は、マグネシウム合金製ですが、金指さんがカモフラージュ塗装をされました。

 腐食する課題を解決するため、今製作を進めている素材は熊本大学が研究している「腐食しないマグネシウム=※KUMADAIマグネシウム合金」です。(※KUMADAI」のフォントは、「Times New Roman」の斜体表記です。)
 これは、航空宇宙産業界で注目をされている素材で、もしこの素材で尺八が完成すれば、“尼崎“から最先端素材を使った商品ができるかもしれません。

——製品化への課題はなんですか?

素材をジュラルミンからマグネシウム合金へ変えたことで音色が良くなりましたが、それでも僅かな音色の再現ができない音域があるため、今もなお試行錯誤を繰り返しています。

——心妙の今後の予定はありますか?

 現在、尺八の流派には大きく分けて「琴古流」と「都山流」がありますが、どちらの流派でも使えるように、音色の調整や歌口の取替などが出来るようにすることが最終目標です。また、金属と日本の伝統工芸を織り交ぜたデザインなどにも力を入れていきたいと思います。
 心妙が製品化した際には、尼崎城や寺町などで演奏し、尼崎で生まれた音色を多くの方に聴いていただき、そして喜んでいただけるように頑張りたいです!

——金指さん、どうもありがとうございました

なんと、この「心妙」の音色を生で聴くことができます!

心妙尺八コンサート

音色を聞いてみたい方は、ぜひコンサートへお越しくださいね!

※チケット購入など詳細は下のチラシをご確認ください。

ちなみに、金管尺八の製作を依頼したのは、イベント主催者の「吉村俊生」さんです。


また、10月下旬からあまがさき観光案内所にて、期間限定で「心妙」の展示を行います。

 あまがさき観光案内所では、デライトラボの他の商品についても技術展示及び商品販売を行っています。
 普段はあまり目にすることのできない商品もご用意していますので、お気軽にお立ち寄りください(9月1日~11月末)。

デライトラボの商品は購入できます

対象商品1個から名入れのサービスも!

以下のURLからご注文いただくことが可能です。

▼デライトラボ Official online shop
https://www.delightlabo.jp

協力:ゼロ精工株式会社・デライトラボ

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