契沖誕生の地 尼崎
契沖は江戸時代初期~中期の人物で、1640年に尼崎の城下町、当時の尼崎城近くの武家屋敷で生まれたと考えられています。幼いころから記憶力が抜群!父母から「百人一首」などを習っていたそうです。
1. 契沖生誕の比定地・歌碑
まず、現在の尼崎城のほど近く、中央図書館の南にあるのが、「契沖生誕の比定地(ひていち)」です。
住 所:尼崎市北城内27付近
アクセス:阪神尼崎駅より徒歩6分
声はして 空行雁の つらつらに みれどもみえず かすむ夕ぐれ
「声はするが(姿は見えない)連なって空を行く雁をよくよく目を凝らして見ようとするが見えないほどに霞んでいる夕暮れであるよ」というような意味でしょうか。
契沖は、古典の研究者であるとともに、多くの歌も残しています。市内には、このほかにもいくつかの歌碑がありますので、追ってご紹介していきます!
尼崎を離れ、修行の道へ
契沖は1650年に数え年11歳で出家。13歳で剃髪して高野山に上ります。
そして、23歳で現在の大阪市天王寺区にあった曼陀羅院の住職となりました。
幼少より歌に親しみ、多くの歌を詠んでいた契沖は、その頃より、終生の友となった、和学者であり歌人でもある下河辺長流(しもこうべちょうりゅう)との親交を深めていきます。
2. 歌碑(@口の開公園)
口の開公園に契沖の「歌碑」があります。
武庫の浦の わだのみさきに よる浪の ここにもかくる 天の橋立
「武庫の河口部の海浜に連なるわだの岬に打ち寄せる波は、天下の名勝丹後の天橋立をここ武庫の浦にもかけていることだよ」
住 所:兵庫県尼崎市大庄西町2丁目4
アクセス:阪神武庫川駅より徒歩9分
この歌は、契沖が29歳の春ごろ、今の姫路に住んでいた母親を訪ねる道中で詠んだ歌だとされているそうです。
当時の尼崎・西宮地域の沿海部では現在の神戸市の和田の岬の方までずっと見渡せたのでしょうか?
長い長い海岸が続き、その海岸線に沿って中国街道が西へと延びていました。
自動車や電車のない時代です。契沖は何を思いながら長い旅路を歩いたのでしょうね。
古典研究者の道へ
さて、その後契沖は古典研究に没頭していきます。
1690年に完成した万葉集の解説書『万葉代匠記』のほか、研究の成果を世に送りました。
中でも『和字正濫抄』(わじしょうらんしょう)は、当時においても古典であった『万葉集』を中心に『日本書紀』『古事記』『源氏物語』など平安中期以前の文献から史上初めて仮名遣いを分類し、その研究成果を著したものです。
(学校の古典の時間には、歴史的仮名遣いには一定の法則性があることを習いますが、その法則の基礎となる考え方を“発見”したのが契沖でした。)
契沖は『和字正濫抄』を著すに際し、実際に古典書を読み込むことで実証を重んずるという研究方法を樹立し、仮名遣いを整理分類しました。途方もない作業だったでしょうね。
尼崎市内 契沖の歌碑・記念碑
3. 歌碑(@大覚寺)
阪神尼崎駅近くの寺町にある寺社の一つ大覚寺に、別の歌碑があります。
しなが鳥 けさや氷もゐな河の 山彦とよむ 音も聞こえず
「冷え込む今朝は、あの猪名川にも氷が張って、いつもなら山に反響してごうごうと流れる河音も聞こえないことだよ」
住 所:尼崎市寺町9番地
アクセス:阪神尼崎駅より徒歩4分
4. 契沖神社(@櫻井神社)
櫻井神社には、契沖の生誕地が神社に程近い尼崎市北城内に比定されていることから、学問の神として祀った「契沖神社」があります。
住 所:尼崎市南城内116-11
アクセス:阪神尼崎駅より徒歩6分
5. 歌碑(@中島川河川敷公園)
中島川河川敷公園にも歌碑があります。
住 所:尼崎市東初島11付近
アクセス:阪神大物駅より徒歩16分
春風の 吹きて渡れる 川の瀬に 雪解の水を 泳く白波
「春風が吹き渡っている川の浅瀬では、雪解け水を湛え白波を立てながら流れていくことよ」
厳しい冬が終わり、春が訪れ世界が生き生きと動き出す様を詠んだ歌でしょうか。
研究者契沖の功績
契沖が『和字正濫抄』で明らかにした仮名遣いも、後世の人々によって修正が重ねられ、現代におけるいわゆる「歴史的仮名遣い」へと洗練されていったので、残念ながら契沖が古からの仮名遣いを完璧に明らかにしたという訳ではありません……。
しかし!近代的な研究方法を樹立したこと自体に、契沖の功績があるといわれています。だから「古学の祖」として仰がれているんですね。
参考
「兵庫県ゆかりの作家 契沖」
https://www.artm.pref.hyogo.jp/bungaku/jousetsu/authors/a1069/
「ここまで知らなかった!なにわ大阪をつくった100人 第23話 契沖」
https://www.osaka21.or.jp/web_magazine/osaka100/023.htm
おわりに
尼崎の誇り、契沖!江戸の時代に、尼崎出身でこんなすごい人がいたんだということ、知っていただけましたか?もっと尼崎について知りたい!
そう思われた方は是非、尼崎市立歴史博物館で学びを深めてくださいね。