「神社は地域の集いの場」貴布禰神社:江田宮司
ー今も昔も尼崎を見守る貴布禰神社の宮司さまですが、ご自身の幼いころの思い出の場所を教えてください。
1番の思い出は商店街。小さいころに比べたら少し寂しくなったかもしれませんが、今もこれだけ活気がある商店街というのは珍しいんじゃないですかね。
あとは、神社のとなりにある貴布祢公園。尼崎は産業の町なので、昔はここら辺に3つも小学校があって、子どももたくさんいたんです。うちの神社にもいたずらしにくる子どもたちがいましたね。笑
神社ってもちろん神社を信仰される方が来られる場所なんですけれども、それ以外に「まちの集う場」の役割もあると思うんですよ。それこそ小さい子が神社の境内で遊んだりしたり、社務所にまちの方が集ったりするじゃないですか。
貴布禰神社は地域にとって「集う場」という存在であって欲しいと思ってるんです。なので、地域の方々から「貴布禰神社でこんなことできないやろうか…」と相談をされたことには、できるだけ前向きに検討するようにしてるんです。
―そういった経緯で始まったのが、きふね寄席や尼芋奉納祭なんですね。
もともと出屋敷で、地域の方が「でやしき寄席」っていうのをやってはったんです。本当に小さい会館で。それを時々特別例会で貴布禰神社で開催できないかというご相談があり、でやしき寄席特別例会として始ったのがきふね寄席なんですよ。年に3回(3・5・7月)開催していて、コロナ禍の現在でも、人数を制限しながらではありますが、市内はもちろん、市外・県外からも、たくさんの方に来ていただいています。
あと、すっかり貴布禰神社の恒例行事となった「尼芋奉納祭」(尼崎の伝統野菜である「尼芋」を神様にお供えする行事)も、尼いもを復活させた団体さんから、「こういうお祭りがしたいんだけど…」と相談があって、それならご協力しましょう!と始まったものなんです。今や、三和市場のガサキングも奉納に参加してくれたり、地域の学校や婦人会が尼芋をつかったお菓子のブースを出したり、と、地域の方自身が盛り上げてくれるようになりました。
実は、以前、「学生さんが布を探している」というお話を聞いて、使い古していた白袴と浄衣を提供させていたことがあって。僕はあげるつもりで差し上げたんですが、なんと尼芋の皮で染められてお返しいただいたんです。その浄衣は毎年「尼芋奉納祭」の神事に着用させていただき、本当に「ご縁」の力を感じています。
―貴布禰神社さんには、2019年の夏に開催された「阪神なんば線ミーツ・アートin尼崎」でも作品の展示会場としてご協力いただきましたよね。
そうなんです。「阪神なんば線ミーツ・アートin尼崎」も、同じように阪神電鉄さんやあまがさき観光局さんから相談があって、それなら是非場所を使ってくださいとお引き受けしました。
あの時は地域の子どもたちに「展示の準備を手伝って!」と呼びかけて、作品の設営を子どもたちが手伝ってくれたんですよ。アーティストさんの作品の設置のお手伝いをするなんて、子どもたちにとってもすごくいい思い出になったと思います。
―イベントに来られた方はなんとおっしゃっていましたか?
尼崎の方でも、貴布禰神社の作品を見に来る道すがら寺町を初めて通って、「尼崎にもこんなに風情があるところがあったのね!」と驚かれたんです。人って案外自分の生活圏内のことしか知らないもので、寺町の存在は知っていても、来たのは初めてだという方もおられました。
尼崎の周辺の市に住んでる方にとって、尼崎って「通過するだけの都市」だと思うんです。尼崎は知ってるし、乗り換えもするから、「知っていたつもり」だったけど、実際には降りたことがなくて、「なんとなく尼崎をイメージで捉えていた」っていう方がとても多い。このアートイベントをきっかけに初めて尼崎に降り立ってくれたという方もいらっしゃって、嬉しかったですね。
―今回は、尼崎の夏の風物詩である「だんじり」も展示していただけるんですよね。(3/19~21・3/26・27)
保存会のみなさん、喜んでお引き受けくださいました。尼崎って「自分たちの地域のことは自分たちの力でなんとかしよう!自分たちで盛り上げていこう!」という方が本当に多いんです。実は、これは近くの市ではあまりない現象です。
核となるアートイベントがあって、僕たちも盛り上げてやろか!という地域の心意気がある。
あまがさきアート・ストロールで尼崎に来られる方には、そういった尼崎の方々の力も是非感じてほしいと思っています。