「できない理由を探して誰かのせいにするぐらいなら自分でやった方がいい」
―お店をされるまではお勤めをされてきたそうですが、独立に迷いはありませんでしたか?
オープンしたのが(2021年の)6月ぐらいで、ガチガチの緊急事態宣言下でしたが、できない理由を探して会社が悪い、政治が悪いって言うぐらいなら自分でやった方がいいと思ったんです。
これも雇われ(る立場)だったら、ただの一般市民でしかないから言えない。そういう何物でもない状態で言っても誰にも伝わらない。
だから自分でチャレンジして結果を出していくっていうのが、とても大事なんじゃないかなと思います。
「人を目的とする場所を目指したい」
―玉井さんの考えるこの店の魅力は何ですか?
今来て下さるお客様は、結局僕に会いに来て下さっています。料理、内装は真似できるし、特に美味しいまずいは感覚でしかない。コンビニ弁当や冷凍食品も今はとてもクオリティも上がっています。そこで勝負するなら他店舗展開やフランチャイズといった、オートメーション化を考えます。しかし、それには何億という資金が必要で容易ではない。
だったらスナックみたいに人を目的とする場所を目指そうと思ったんです。
スナックのママはAIには真似できない、だってママに会いに来るんだから。そういう店じゃないと勝てない。
「尼崎はまだまだ伸びる市だと思う」
(尼崎市で考えても同じで、)資金源がない尼崎でやるとしたらそこ(編集者注:“人”)しかないと思います。勿論技術は必要ですが、それが一番じゃない。
漫才師もそうですが、ロボットでできないことを僕らでやって自分自身にお客様をつけられるか。魅力はそこにあると思います。
ローカルな町の魅力はそこでしか出せない。
安売りしなくともそういう価値観でやっていきたいし、やっていけると思っています。
やり方次第でまだまだ伸びる市だと思っています。
「人のつながりは生まれたときから必要で『当たり前』」
―玉井さんが出逢いや繋がりといった“人と”に力を入れるようになった契機は何ですか?
雇われていた頃から商売として、物を売る仕事に携わってきました。
商売は強い関わりがないと、仕入れ等成り立たないことも沢山あります。繋がろうと思えば広く繋がることができる時代ですが、本当に大切なのは身の回りの人と繋がること。
マーケティングの著名人も今でも繋がりの大切さを口にしています。いつ気づいたとか始めたということではなく、人との繋がりは生まれたときから必要なことで、謂わば『当たり前』。
今の時代、逆に気づかなくなってきている。時代は進んでいるように見えても、(実は)遅れてしまっていると感じています。
そんな玉井さんがコロナ禍で“繋がり”について考えたこと、それは・・・
良い関係ならお節介しないことです。哀れんでるように感じてしまうのでー。
(お節介は、)自然と助けられている状態を作れる人間しかやってはいけないのかなと思います。もちろん(された方は、)そこに感謝は忘れてはいけません。
そして、そういったことは、コロナ禍関わらずじゃないかなと思っていて、コロナ禍でできないことはコロナ外でもできないと思います。
やっぱり一番は地域の方、お店に来て下さる方。ちょこちょこ繋がりがあってこそ、やっていけているのかなという風には思いますね。
編集後記
飲食業界へのチャレンジや、尼崎のまち、人との”繋がり”に対し、並々ならぬ熱い思いをお持ちの店主・玉井さんへのインタビューでした。
おでんには出汁が、玉さんBALには人情がしゅんでいるようですね。
その2つの薫る出汁を求めて体も心も温まりに足を運んでみては如何でしょうか。
Information
おでんBAL 玉さん家
住所: 兵庫県尼崎市神田北通3丁目40-3レインボープラザ志ビル203
営業時間:月→18:00~24:00、火~日→18:00~翌4:00
アクセス:阪神尼崎駅から徒歩5分
文章・写真:関西学院大学経済学部栗田研究室
私たち関西学院大学経済学部栗田研究室は「これまで尼崎を支えてきた地元のお店や人々の魅力を伝えるとともに、未だ『苦い』印象をもたれることのある尼崎のイメージを今まで以上に親しみやすく、『甘い』ものへと変えていく」という想いでこの「甘尼」の活動を行っています。
詳しい活動紹介はホームページから→https://kurikuriresearch.wixsite.com/website