あまの偉人をたずねて―近松門左衛門―

江戸時代の劇作家・近松門左衛門ゆかりの地、尼崎。近松は、晩年の数十年間尼崎を度々訪れていました。大阪で活躍していた近松がなぜ尼崎を訪れていたのか?!また、近松の墓がなぜ尼崎にあるのか?!近松ゆかりの地を巡る散策コースとともにご紹介します。

近松門左衛門ってどんな人?

近松門左衛門は、江戸時代、人形浄瑠璃や歌舞伎の脚本を書く劇作家として活躍した人物です。近松は、当時の上方で実際に起きた心中事件などを脚本の題材としたため、当時の大衆の心をがっちりとらえて大人気劇作家となりました。代表作は『曾根崎心中』や『冥途の飛脚』といった作品です。

なぜ近松門左衛門は大人気劇作家だったのか?

近松作品の魅力のひとつとして、「速報性」があげられます。たとえば1720年に竹本座で初演した『心中天網島』は、実際の心中事件を耳にした近松がその日の晩に台本を脱稿、翌日の稽古を経て、3日目には開演したとのこと。

こうした現代のジャーナリズム的な性格を持ちながらも、親しみやすく大衆の心に響く作品を世に送り出していたので、近松作品は大きな話題を呼び、人気も高かったんですね!

近松門左衛門は、福井県の鯖江で生まれたとされています。武家の子として生まれますが、その後一家は京都へ移住。京都の地から、近松の劇作家としての経歴はスタートし、1706年(近松54歳)には京都から大阪へ移り住んだようです。

あれ?尼崎は?
尼崎で生まれたわけでもなければ、尼崎に住居を構えていたというわけでもありません。
しかし、近松は尼崎を度々訪れ、執筆活動をしていたようなのです……

近松門左衛門と広済寺の縁

尼崎市久々知に現在もある広済寺。ここへは、近松門左衛門が度々訪れて、執筆活動をしていたと伝えられています。

広済寺の住職・日昌上人と親交があったためです。

住所:尼崎市久々知1丁目3-27

京都から大阪に移り住んでから、近松は、大阪の船問屋・尼崎屋吉右衛門宅にたびたび滞在していました。

船問屋を利用する船頭や行商人、旅人たちから全国各地の話を聞き集め、それを題材として作品を執筆していたと伝えられています。

この船問屋が、前述の住職・日昌上人の実家と言われていますので、そこから親交が始まったのかもしれません。

その親交の深さを示すように、広済寺本堂裏にはかつて「近松部屋」という近松のための部屋が用意されていたといわれています。

また、近松の母の供養もこの広済寺で行われました。

近松部屋 模型(近松記念館蔵)

大阪に住んでいた近松ですが、大阪の都会でゲットしてきた耳寄りな面白い話を、ここ尼崎で静かに(当時の広済寺周辺は田園風景が広がっていたはずなので)執筆し、大衆の心に響く作品として完成させていたのかもしれませんね。

「近松の里」を散策!

尼崎市では、広済寺のほかにも近松門左衛門にまつわる場所を「近松の里」として整備しています。今回はその中から、広済寺と合わせて散策できるルートをご紹介!

尼崎市役所公式ホームページ 「近松の里 散策コース」

https://www.city.amagasaki.hyogo.jp/manabu/chikamatu/055chikamatsu_sansaku.html

JR塚口駅東出口付近

最寄り駅はJR塚口駅。JR大阪駅から宝塚線で10分ほどです。

近松公園

まずはJR塚口駅から徒歩15分ほどの近松公園(尼崎市久々知1丁目4)に向かいます。近松公園は、池を中心に園内を散策することができ、園内には近松記念館や近松の銅像があります。

この日は、歩いていると暑くなるくらいのお天気でしたが、木陰も多く、おさんぽにもピッタリの公園です。

住  所:尼崎市久々知1丁目4
アクセス:JR塚口駅より徒歩約15分/JR塚口駅より阪神バス12系統「近松公園」下車

近松記念館(近松公園内)

近松公園内にある施設。
資料室には、近松の過去帳、愛用していたと伝わる文机、手紙など近松ゆかりの資料約100点が展示されています。

近松愛用の文机と伝わっています。

住  所:尼崎市久々知1丁目4-38

営業時間:10:00~16:00

休館日:水曜日、第2日曜日(振替もあり)・夏期(8/13~8/16)・12/29~1/7

入館料:大人 200円・子供 100円

広済寺

「近松部屋」は現在残っていませんが、近松門左衛門の墓があります。日昌上人との親交が深かったことから、近松の墓がここ広済寺にあるのも頷けます。

住  所:尼崎市久々知1丁目3-27
アクセス:JR塚口駅より徒歩約15分

※小園公民館(園田公民館小園分館)も「近松の里」に含まれていますが、現在整備中で立ち入り・写真撮影等ができないため、掲載していません。

更に足をのばして……

以上、JR塚口駅周辺で回ることのできる近松の里をご紹介しました。


このほか、阪急塚口駅には、近松門左衛門の代表作「曽根崎心中」にまつわるモニュメントが。

阪急塚口駅は、JR塚口駅より西へ約1キロの位置。南改札口出てすぐのところにモニュメントがあります。

こちらは、近松の代表作「曽根崎心中」の床本(浄瑠璃の本)をモチーフにしたモニュメント。

また、近松公園付近には久々知須佐男神社や伊居太神社、伊佐具神社など、由緒ある神社があります。

久々知須佐男神社
伊居太神社
伊佐具神社

久々知須佐男神社
住  所:尼崎市久々知1丁目3-28

現在の久々知須佐男神社の敷地にはかつて、久々知妙見宮がありました。妙見信仰は妙見菩薩に対する信仰で、近松の他、同じ時代の芸能人・富豪らの信仰も集めました。
近松は歌舞伎の脚本も手掛けていたことから、ここは多くの歌舞伎役者が訪れた場所でもあります。


伊居太神社
住  所:尼崎市下坂部4丁目13-26

伊佐具神社
住  所:尼崎市上坂部3丁目25-18

時間に余裕のある方は、ぜひお立ち寄りください!

参考

広済寺 近松門左衛門「生涯」・「広済寺との縁」
https://www.kosaiji.org/chikamatsu/index.htm

尼崎市役所公式サイト 近松門左衛門
https://www.city.amagasaki.hyogo.jp/manabu/chikamatu/055monzaemon.html

「年譜」 『近松全集』第十七巻 岩波書店 1994年

尼崎歴史博物館あまがさきアーカイブズ 編集協力


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